文芸雑誌「ココリコ」(COCORICO)1899~1902

文芸雑誌「ココリコ」(COCORICO)1899~1902

 「ココリコ」(COCORICO)とは1899年から1902年にかけて芸術家であるポール・ブティニ(Paul Boutigny)によりフランス、パリで発行された文芸雑誌です。19世紀末、いわゆるベル・エポックと呼ばれたこの時代、ジュール・シェレやトゥールーズ=ロートレック、そしてアルフォンス・ミュシャの登場により、ポスターや版画がフランスで大人気となります。それまでの一部の特権階級に向けた芸術から、広く民衆に愛される芸術としてポスターを始めとした版画芸術は捉えられ、商品や演目の告知を目的とした広告ポスターもより視覚的に楽しめる芸術的になり、それにともない、愛好家やコレクターの登場により著名画家の版画集などが販売されるようになります。

 そして、この1900年前後は室内を彩る装飾芸術への人気も高まり、ミュシャに代表されるような装飾パネルも製作されるようになります。装飾パネルとポスターの違いは、簡単に言えば告知を目的としたものでは無く、室内装飾を目的とした物、フランス語ではパネル・デコラティフ(装飾)と呼び、1900年当時からその呼称で販売されていました。また余談になりますが、このパネル・デコラティフなど装飾芸術をアート・デコラティフと呼び1925年にはカッサンドルやラリックに代表される芸術様式アール・デコにつながっていきます。賢明な読者の方はお気づきのことかもしれませんが、アール・デコはアール・デコラティフからきています。

 通常、アール・デコは様式を指し、アール・デコラティフは装飾芸術そのものを指すと思っていただいて構いません、そのためアール・デコラティフの中にはアール・デコ様式だけでなくアール・ヌーヴォー様式をはじめ日本趣味様式(ジャポニスム)なども含まれ当時の書籍では紹介されています。

 

話が脱線しましたが、この時代はそれほど一般市民が芸術への関心が高まった時代でもあり、それにこたえるべく「ココリコ」誌は誕生しました。ココリコとはフランスを象徴する「雄鶏」の鳴き声「コケコッコー」のことで、創刊号の表紙と中表紙のココリコのロゴデザインをアルフォンス・ミュシャが手掛けていますが、雄鶏が描かれています。

ココリコ創刊号

ココリコ創刊号中表紙

ココリコ創刊号と中表紙

cocorico_mucha

中表紙上部のロゴはアルフォンス・ミュシャによるのもで、下部のラッパも持っている女性はアドルフ・ウィレットによるもの。日本ではあまりなじみがないかもしれないが、ウィレットはこの時代を代表する人気挿絵・風刺画家であり内装(装飾芸術)にも優れていて、キャバレー「シャ・ノワール」や「ムーラン・ルージュ」の内装も手掛けています。

このラッパを吹く女性はこれ以降ココリコ誌のイメージキャラクターとなり、たびたび紙面に登場します。

cocorico_willette

その他にも、アール・ヌーヴォーを代表する画家も多く参加し、

スタンラン ココリコ

テオフィル・スタンラン『ココリコ第2号』表紙

ジョルジュ・ド・フール『ココリコ』表紙

ジョルジュ・ド・フール『ココリコ15号』表紙

ミュシャやスタンラン、ド・フール、グリュンやパル(PAL)、コサール、ローデルなどが表紙を手掛け、まさにアール・ヌーヴォーを代表する雑誌と言えます。

そして中には往々にして数枚のイラストが掲載されました。

ミュシャ10月
テオフィル・スタンラン
オーギュスト・ローデル

そしてこの雑誌最大の特徴でもあるのが、当時のポスターや装飾パネルの価格表が広告として載っていることです。このポスターはいくらで販売されている、ミュシャの装飾パネルはいくらなど今日ではとても貴重な資料になっています。

>美術画廊「リボリアンティークス」

美術画廊「リボリアンティークス」

19世紀の絵画・版画・リトグラフなどアール・ヌーヴォーやアールデコの作品を多数扱っております、JR田町・都営三田駅徒歩4分、札ノ辻交差点角

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