アルフォンス・ミュシャが1899年に描いた幻想的なリトグラフ作品、≪羽根の精≫。羽根をまとう神秘的な精霊が、静かにこちらを見つめるその姿は、言葉を超えて優雅さと夢の間を漂っています。流れるような線と繊細な色彩、その佇まいは、まるで空に浮かぶ美しい詩のよう。
本作に描かれた女性像は、自然や神秘の象徴として構成され、アール・ヌーヴォーを代表する美学と、ミュシャならではの詩的感性が見事に融合しています。
≪羽根の精≫は、もともと≪羽根の精≫と≪花の精≫の二枚一組の装飾パネルセットの一部として制作されました。この二人の女性像は、ミュシャの作品の象徴ともいえる「後光」や「髪飾り」をまとい、シャンプノワ社が販売した装飾パネルの中でも最高峰とされました。発売当初、1セット12フランで販売され、その美しさが評価されています。
また、ミュシャは後に「四つの花」や「果物と花」といったシリーズを制作したため、≪花の精≫は「桜草の精」と改名され、混乱を避けるために区別されました。
本作は、パリの印刷業者J. Royerによってカレンダーとして使用されたと考えられており、上部には「IMPRIMERIE / J. ROYER / LITHOGRAPHIE」の文字が記され、元の装飾的なバーが取り払われています。また、星形の装飾が施された下の段には「1900」の年号と、JRのイニシャルがドレスの右下に記されています。
ただし、本作がカレンダーとしての用途が確認されたことはなく、≪桜草の精≫が同様にJ.Royerによって使用されたかどうかは不明です。
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