ミュシャの人気を決定づけたともいえる≪黄道十二宮≫はミュシャの黄金期ともいえる1896年に印刷所シャンプノワ社のカレンダーとしてデザインされました。横向きの女性の背後に黄道十二宮(十二星座)を光輪として配し、下段に365日の日付と聖人の名が描かれた素晴らしいデザインのカレンダーは、雑誌「ラ・プリュム」を創刊し、美術展「サロン・デ・サン」を主催していた小説家・詩人のレオン・デシャンがとても気に入り「ラ・プリュム」のカレンダーとして使用したことで一躍人気をあび、長らく「ラ・プリュムのカレンダー」と呼ばれていました。
この作品は、カレンダーの代わりに翼をもつ天使が描かれ、室外を飾った広告ポスターと対をなす、室内を飾ることを目的とした「装飾パネル」として、翌年1897年に制作されたと考えられます。女性を囲む光輪には12星座のシンボルが描かれ、金と銀で装飾されたさまは、まさに夜空の星々を想像させ、ベル・エポックの室内を華麗に彩りました。
天空を巡る太陽の通り道──それが「黄道」です。
古代の人々は、この道筋を背景に輝く星々を観察し、
一年を12の区分に分け、それぞれに象徴的な星座を結びました。
それが、いわゆる「黄道十二宮」です。
牡羊座に始まり、牡牛座、双子座へ。
蟹座、獅子座、乙女座。
天秤座、蠍座、射手座。
山羊座、水瓶座、魚座へと巡る十二の宮は、
季節の移ろいとともに、私たちの時間感覚や自然への感受性と深く結びついてきました。
この十二宮は、占星術においても重要な役割を担い、
個々の性格や運命を読み解く手がかりとされてきました。
また美術や文学の世界でも、永遠の象徴、神秘の図像として繰り返し描かれています。
アルフォンス・ミュシャの手による『黄道十二宮』も、
こうした悠久の星座の物語を、優美な装飾芸術に昇華させたものといえるでしょう。
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