アルベール・ロビダが発表した《Le Vingtième Siècle(20世紀)》は、科学と文化の進歩を祝福しつつ、どこか風刺的に未来社会を見つめた、ビジュアルとユーモアに満ちた挿絵小説です。
19世紀末、ヨーロッパでは科学と芸術が飛躍的に進歩し、未来への想像力があふれていました。
そんななか、フランスの画家であり小説家でもあるアルベール・ロビダ(Albert Robida, 1848–1926)は、近未来の世界をユーモアと批評の眼差しで描いた挿絵小説『20世紀(Le Vingtième Siècle)』を刊行します。
ジュール・ヴェルヌと並び称される空想科学の先駆者としてのまなざし。
飛行船が交差し、テレコミュニケーションが家庭に入り、人類は衛生と教育によって進化する──
それは、20世紀を目前にした19世紀末の想像力が描いた未来。
このページでは、リボリアンティークス所蔵の『20世紀』初版本より選りすぐりの挿絵をご紹介します。
技術と想像が交錯するロビダの未来都市へ、どうぞお楽しみください。
家庭の一角に設置された映像通話装置「テレフォノスコープ」。
現代のテレビ会議やSNSを思わせるその発想は、まさに時代を先取りした未来予想図です。
空を自在に移動する邸宅。
ロビダが描く未来の生活空間には、利便性だけでなく、どこか夢のような優雅さが漂います。
月面旅行に出かけた探検隊と、地球を見上げる人物。
100年以上前に描かれたこの挿絵が、現代の宇宙旅行ブームと響き合うのは驚きです。
空を巡回する警察部隊──監視社会やドローン警備を思わせる一枚。
ロビダの未来像は、技術と統制のバランスにも触れています。
ネオンに彩られた空中都市の夜景。
華やかで幻想的な風景のなかに、ロビダの視覚的ユートピアが広がります。
ゴシック建築と飛行機が交差する空中駅の風景。
パリの象徴ノートルダムに造られた、19世紀末の空想は空をも都市に取り込もうとしています。
空中に浮かぶ療養施設では、患者が音楽を聴き、快適に保養生活を送る。
科学と人間福祉の融合を理想としたロビダの温かな未来観が感じられます。
科学技術の進歩によって人類は進化し、社会はより衛生的で快適になる──
アルベール・ロビダが描いた未来世界には、そうした“進歩の物語”が確かに息づいています。
しかし、彼の挿絵をよく見ると、そこにはもう一つの視点が潜んでいます。
空を巡回する警察部隊や、音声と映像で管理される情報環境、国家によって制度化された保養施設。
それらは、現代にも通じる「管理と自由のせめぎ合い」を象徴しているようにも思えます。
ロビダの未来図は、明るさとともに、どこか不安や皮肉を帯びています。
それは彼が、ただ楽観的に技術を賛美するのではなく、**「社会そのもののあり方」**に目を向けていた証でもあります。
ユートピアとディストピアのあわいに揺れるこの挿絵集は、未来に期待を抱くと同時に、
その未来がどのように形づくられるのかという、問いかけそのものなのです。
本ページでご紹介している作品は、1883年にフランスで刊行されたアルベール・ロビダの挿絵小説『20世紀(Le Vingtième Siècle)』の初版本に収録されたオリジナルのアンティーク挿絵です。
印刷にはリトグラフやエッチングなど、当時の高度な技術が用いられ、イラストレーションとしての芸術的完成度も極めて高く評価されています。
未来社会をテーマにした挿絵は19世紀美術の中でも稀少であり、ロビダ作品はその先駆的な例として国際的なコレクターの注目を集めています。
一点ごとに保存状態や版面の風合いが異なり、裏面には印刷がなく、額装によってその魅力が一層引き立ちます。
リボリアンティークスでは、作品ごとにスキャン画像・拡大写真・額装例をご確認いただけるよう掲載しております。
現代にも響くこの「もうひとつの20世紀」を、ぜひあなたの空間でお楽しみください。
東京・三田にある店舗「ギャラリー札の辻」(予約制)では作品を実際にご覧いただけます。
また本ページでご紹介した挿絵作品は、オンラインショップでも1点ずつ販売しております。
ご自宅に飾るもよし、未来への想像を胸に贈り物として選ぶもよし──
アルベール・ロビダが描いた「もうひとつの20世紀」の世界を、ぜひその手に取ってお確かめください。
商品の詳細や額装の有無、状態写真は各商品ページにてご覧いただけます。
ロビダが未来を夢見た19世紀末はベル・エポックと呼ばれたパリ。ご興味のある方は読み物(ブログ)もぜひご覧ください。