アルフォンス・ミュシャのリトグラフ(石版画)

──「本物」とは何か。その価値を正しく知るために
ミュシャのポスターを前に、「これは複製なのでは?」「なぜこんなに高いのか?」と疑問を持たれる方が少なくありません。
ですが、その疑問の多くは、リトグラフという技法や、アール・ヌーヴォーの美術の成り立ちを正しく理解すれば解けていくものです。
本記事では、特に誤解されやすい「複製と本物の違い」、そして価格の正当性について、わかりやすくご説明いたします。
リトグラフとは?──“複製”ではなく“原作”であるという誤解
ミュシャの作品は、その多くがリトグラフ(石版画)という技法で制作された「版画」です。
ここで「版画だから複製だ」と思われるとすれば、それは大きな誤解です。
現代のコピー機やデジタル印刷による“複製”と違い、19世紀末のリトグラフは、画家自身が石版に直接描き、印刷所の職人と協働で色を重ねた作品です。つまり、リトグラフは制作時点から“完成作品”であり、最初から複数刷られることを前提とした芸術作品なのです。
ミュシャの代表作≪夢想≫を例にとれば、世界中の美術館に複数の所蔵があります。これは原画が複製されたのではなく、どれも当時に刷られた正規のオリジナル=“本物”のリトグラフであるということです。
リトグラフは“複製”か? それとも“本物”か?
この問いの答えは、実は「どちらも正しい」です。
たしかに、「リトグラフ」という言葉だけでは、それが1900年頃にミュシャ自身が制作した“オリジナル”なのか、あるいは後年に誰かが技法だけを真似て刷った“複製”なのかを区別することはできません。
ですから重要なのは、いつ・誰が・どのように制作したかという文脈を知ることです。
✔ 例えば──
- 1900年頃、ミュシャ自身が制作したリトグラフ作品 → オリジナルであり、本物の美術品。
- 後年、同じ図像をもとに別人が刷ったリトグラフ → 技法は同じでも、これは複製。価値はまったく異なります。
リトグラフという言葉だけで判断してしまうと、本物を「偽物」と誤解したり、逆に複製を「本物」と信じ込んでしまう危険があります。
真贋を見分けるポイント
① 価格で見分ける
ミュシャのオリジナルリトグラフは、美術館級の作品として高い評価を受けており、現在その価格は市場価格を離れることはありません。
あまりに安価な価格で出回っているものは、後年の再刷や複製の可能性が高く、慎重な判断が求められます。
② 状態で見分ける
100年以上前の作品であるにもかかわらず、「まっさらで完璧」な状態のものはむしろ注意が必要です。
当時の紙質、印刷の風合い、余白の残り具合、色の濃さ──こうした経年変化が自然に感じられることこそ、本物の証拠でもあります。
状態が良好な作品は当然高額になりますが、状態と価格のバランスには明確な理由が存在します。
最後に──「気に入った作品が一番の正解」
版画とはいえ、ミュシャのリトグラフには1枚ごとに異なる表情があります。
摺りの具合、色の深さ、紙の風合い、どれ一つとして完全に同じものはありません。
だからこそ、大切なのは**「この1枚に惹かれる」**という直感です。
それが、時を超えて出会った“自分だけのミュシャ”であり、アンティークを楽しむ最大のよろこびです。
リボリアンティークスのミュシャ作品について
当店では、ミュシャの正規のオリジナルリトグラフ(19世紀末〜20世紀初頭に制作されたもの)を中心に、美術的・歴史的価値のある本物のみを厳選して取り扱っております。
気になる作品やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
店頭・オンラインショップ・お電話、どの窓口でもご相談を承っております。
あなたの感性に響く、たった一枚との出会いがありますように。
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