ミュシャの絵はがき入門|チノ版・ジョブ版ほか全タイプと歴史をやさしく解説

アルフォンス・ミュシャの絵はがきは、小さなサイズに込められたアール・ヌーヴォーの精華です。
美しい女性像、優美な曲線、淡く彩られた背景──それらがポスターだけでなく、誰もが手に取れる「絵はがき」としても愛されてきました。
本記事では、ミュシャが手がけた絵はがきの種類(チノ版・ジョブ版・シャンプノワ版など)やその特徴、現在のコレクション価値について詳しく解説いたします。
コレクター初心者の方から専門的に調べたい方まで、ぜひご参考にどうぞ。
本記事では、ミュシャが手がけた絵はがきの種類やその魅力を詳しくご紹介いたします。
なお、当店でご紹介しているミュシャの絵はがきコレクションはこちらのギャラリーページよりご覧いただけます。
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ミュシャと絵はがきの関係
なぜポスター作家が絵はがきを手がけたのか
アルフォンス・ミュシャは、19世紀末にポスター芸術を大衆化させた中心的存在として知られています。その一方で、当時の人々の暮らしに広く浸透していた「絵はがき」の世界にも力を注ぎました。
小型ながら芸術性の高いアイテムとして、絵はがきは贈り物や収集の対象となり、ミュシャの美意識を身近に感じられる手段のひとつとなったのです。

ジリ・ミュシャによる証言
ミュシャの息子であり伝記作家でもあるジリ・ミュシャは、絵はがきの役割について次のように述べています。
「シャンプノワがミュシャの新しい利用法を見つけたことで、世界中に絵はがきが出回るようになった。そして膨大な数の絵はがきによって、彼の名は広く知られるようになったのかもしれない。」
アルフォンス・マリア・ミュシャ芸術と生涯 ジリ・ミュシャ(イージー・ムハ)著
この言葉からも、絵はがきが芸術作品の一形態であると同時に、ミュシャの名声を世界に広めた重要なメディアであったことがうかがえます。
ミュシャの絵はがきは何種類ある?
絵はがきコレクションの体系とカタログ・レゾネ
ミュシャが手がけた絵はがきは、出版社や制作年によりいくつかのシリーズに大別されます。
これらを包括的に整理した資料として知られるのが、1980年に出版された『アルフォンス・ミュシャの絵はがき』。この書籍は絵はがき版のカタログ・レゾネ(全作品網羅の図録)に近い内容を持ち、多くのコレクターの基準となっています。
絵はがきにおける希少性(残存数・価値の目安)
このカタログには、各作品のおおまかな現存数や流通状況が記載されており、希少性(レア度)を判断する目安ともなっています。
実際、状態の良いオリジナル絵はがきは市場でも人気が高く、美術的価値だけでなく収集対象としての魅力も兼ね備えています。
各シリーズ別の特徴と見どころ
チノ版(1898年)|有名ポスターの縮小版
チノ社は、当時人気の高かったポスターを絵はがきサイズに縮小して販売した出版社です。1898年に発売された全36種のうち、ミュシャは≪ジスモンダ≫≪椿姫≫≪ロレンザッチオ≫≪サマリアの女≫≪ウェイバリー自転車≫の5作品で参加しました。
これらはまさにポスターを“手に取る芸術”へと変換した先駆的シリーズといえるでしょう。


それぞれのシリーズは、絵柄や発行背景によって独自の魅力を備えています。
リボリアンティークスでは、こうしたシリーズに属するオリジナルの絵はがきを取り揃えております。作品一覧はこちらからご覧いただけます。
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ジョブ版(1905–1914年)|広告の魅力を封じ込めたシリーズ
タバコの巻紙メーカーであるジョブ社は、自社ポスターを基にした絵はがきを制作しました。ミュシャの代表作である1897年のカレンダーや1898年のポスターが採用され、6種類の絵はがきとして展開されました。
商業広告と芸術性が見事に融合したシリーズで、特に彩色の美しさが際立ちます。

それぞれのシリーズは、絵柄や発行背景によって独自の魅力を備えています。
リボリアンティークスでは、こうしたシリーズに属するオリジナルの絵はがきを取り揃えております。作品一覧はこちらからご覧いただけます。
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モエ・エ・シャンドン版(1900年頃)|シャンパン会社による特注品
高級シャンパンで知られるモエ・エ・シャンドン社が、販売促進のためにミュシャに依頼した絵柄を絵はがき化したシリーズです。
宛名面が印刷されていないものも多く、メニューや案内状としても使用された可能性があります。
実用品と芸術品の間に生まれた、ユニークな位置づけのシリーズです。

それぞれのシリーズは、絵柄や発行背景によって独自の魅力を備えています。
リボリアンティークスでは、こうしたシリーズに属するオリジナルの絵はがきを取り揃えております。作品一覧はこちらからご覧いただけます。
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シャンプノワ版(1898年頃〜)|絵はがき用オリジナル図柄と彩色技術
シャンプノワ社は、ミュシャの絵はがき制作において最も力を入れた出版社のひとつです。
特徴的なのは、ポスターを縮小したものだけでなく、絵はがきのために描き下ろされた図柄が多く含まれている点です。モノクロ作品に彩色を施したものや、万国博覧会の図案をもとにしたものなど、バリエーション豊かな構成となっています。

シャンプノワはさらに自身が出版したミュシャのモノクロの作品、例えば「ココリコ」「レスタンプ・モデルヌ」「1900年万国博覧会のカタログ」などを、絵はがきで販売する際には彩色しとても豪華に仕上げています。

それぞれのシリーズは、絵柄や発行背景によって独自の魅力を備えています。
リボリアンティークスでは、こうしたシリーズに属するオリジナルの絵はがきを取り揃えております。作品一覧はこちらからご覧いただけます。
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ミュシャの絵はがきを楽しむには
実物を手にする魅力(当店の所蔵品から)
リボリアンティークスでは、シャンプノワ版やチノ版を中心に、当時に実際に制作されたオリジナルの絵はがきを所蔵・紹介しています。
小さな紙面の中に宿る装飾美は、ミュシャ芸術の神髄を凝縮したような存在。ぜひ実物をご覧いただき、手に取るよろこびを感じてください。
どこで手に入る?購入・鑑賞のポイント
ミュシャの絵はがきは、美術館や古書市、専門のアンティーク店で見かけることがありますが、状態や真贋の見極めが重要です。
当店では絵はがきの来歴や保存状態にもこだわり、安心してお選びいただける品をご紹介しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
小さな紙面に凝縮されたアール・ヌーヴォーの美。ミュシャが描いたこの芸術のかけらは、今も私たちの暮らしに寄り添ってくれます。
実際に作品をご覧になりたい方、コレクションを始めてみたい方は、当店の所蔵品・販売ページをご覧ください。
→ ミュシャの絵はがき|販売中の作品を見る
まとめ|小さな紙面に咲くアール・ヌーヴォーの美
絵はがきという身近な媒体に、ミュシャはその装飾美と詩情を惜しみなく注ぎ込みました。
アール・ヌーヴォーの時代を映し出す小さな窓──それが、ミュシャの絵はがきです。今なお色あせないその魅力を、ぜひコレクションや暮らしの中で味わってみてください。