1895年にジュール・シェレにより描かれたタバコ巻紙「ジョブ」の広告ポスター。
若い女性がタバコを吹かし肩越しにこちらを挑発している印象的なこのポスターは、シェレにしては珍しく、明るく軽やかで躍動感のある若い女性「シェレット」ではなく、タバコの煙が女性を取り囲むことによりタバコそのものよりもタバコを吸う女性に焦点を当て、当時確立されはじめた自立した新しい女性像「新しい女」を表現している。
このようにタバコを吸うことに焦点を当ててはいるものの、「ジョブ」とはタバコのメーカーではなく、そのタバコの葉を巻く巻紙シガレット・ペーパーのメーカーであった。
今ではタバコと言えば、このシェレの絵にも描かれている紙巻きたばこが主流であるが当時は刻んだタバコの葉をパイプで喫煙するのが主流であり、自身でタバコの葉を紙に包んで喫煙する紙巻たばこは少数派であった。
しかし1838年にジャン・バルドーは刻んだタバコの葉を紙で包み喫煙する、紙巻たばこの紙、シガレット・ペーパーを発売する。このジャン・バルドーのシガレット・ペーパーはあらかじめタバコ一本分のサイズに裁断されており、簡単にタバコを巻くことができた。当初はジャン・バルドーのシガレット・ペーパーとして販売をしていたが、ジャン・バルドーのシガレット・ペーパーは人気をはくし、徐々に人々からそのロゴゆえジョブと呼ばれるようになる。これはジャン・バルドーのロゴが頭文字であるJとBを◇でつないだJ◇Bであり、この◇をOに似ていることからきている。
ミュシャのポストカードに描かれたジョブ社のロゴ「J◇B」
1849年にはこのジョブの名で特許を取得している。
その後芸術に理解のあった息子、ピエール・バルドーの代になると、まだまだタバコと言えば男が吸う物であったが、あえて若い女性にタバコを吸わせるポスター、コレクション・ジョブと呼ばれる一連の広告ポスターを企画する。
このポスターにはジュール・シェレを始めアルフォンス・ミュシャなども作品を手掛け人気を博し、ポスターだけではくポストカードも製作されている。
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